故郷(ふるさと)を離れ都会で働くすべての人の応援ソング『思い出せてよかった』(STU48)

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①歌詞について 

 

ふるさとの訛なつかし停車場の人ごみのなかにそを聴きにゆく

 

昔学校で習った石川啄木のこの短歌に、少し似たような世界観を持つのがSTU48二番目のオリジナル曲「思い出せてよかった」です。もちろん自分の独断と偏見ですが。

岩手から上京してきた啄木は、その作品から感じられるイメージほどには清貧というわけではなくて、有名な貧乏な逸話もその原因は女遊びと、地道に働くことができない自身の性格。わかりやすく言えば生活破綻者なんだけれど、そういうところも含めて彼には共感しか覚えない自分もいたりなんかして・・。

 

いきなりSTUとはなんの関係もない話しですが、たぶん、どうせ浅草あたりで夜遊びしたりして辿り着いた上野駅で思いがけずふるさと訛の言葉に接したのかな、なんて想像をするのですが、その時彼の胸に去来した思いの中に「希望」のひとかけらがあったんじゃないのかな、そんな想像もするのです。夢を抱いて東京に出てきても思い通りにならない人生もある。自分に言い訳したりして、酒飲んだりして、お遊びしたりして、そんな人生を送ってしまったけど、不意のふるさと訛に若かりし頃の自分を思い返してみたり・・・。

 

STUに戻ります。こちらはもっと綺麗で純粋なお話し(笑)。

君と知り合ってどれくらいだろう?

いつが初めてか覚えていない

ずっと昔から聞いていたような

言葉の懐かしさを僕は感じていた

 

雑踏のその中で

見失う花がある

通り過ぎる人の群れは

あの日見てた夢を捨てて

どこへ向かうのかな

 

思い出せてよかった

僕がこの街を目指したわけ

もしも君と巡り合わなければ

自分を忘れて きっと流されていた

 

ただの付き合いで行っただけなのに

花火大会に君がいたんだ

誰も気づかないイントネーションに

一瞬 故郷(ふるさと)の空が目に浮かんだ

 

打ち上げた五尺玉

消える度真っ暗で

そばの誰かさえ見えず

僕は揺れる影のようで

孤独だと思った

 

思い出した希望は

遥かあの街の風の匂い

海を見つめ 語り合った未来

青春時代の友は元気だろうか?

 

ほっとしたよ 出会って

僕は今だって変わってない

 

思い出せてよかった

僕がこの街を目指したわけ

もしも君と巡り合わなければ

自分を忘れて きっと流されていた

 

           作詞:秋元康 作曲:Hiro Hoashi 歌:STU48

 

 都会で働き始めると、とにかく仕事も生活もいろんなおつきあいも大変で、次第に故郷とは疎遠になっていくものです。若いころは大袈裟に語ってみせた夢だとか希望も、そのうち現実に収束されていくものだと思います。歌詞の中の「雑踏のその中で見失う花がある」「通り過ぎる人の群れはあの日見てた夢を捨ててどこへ向かうのかな」、という表現が象徴的なのかなと思います。よくわかります。

 

そんな中、その言葉に懐かしさを感じる「君」に出会って、自分を思い出すことができた。そんな一番の歌詞だと思います。

 

二番になると歌詞はもっと踏み込んでいきます。

「誰も気づかないイントネーションに一瞬故郷の空が目に浮かんだ」、そして、花火の光のあとの影に自分の孤独を重ね合わせます。自分の胸の孤独の箱の隅には実はまだ「希望」が残っていて、主人公はそのことを思い出すわけです。「海を見つめ語り合った未来」「遥かあの街の風の匂い」と一緒に。

 

特に恋愛のうたというわけでもないし、ぼんやり聴いてると、どういう歌詞なの?みたいな印象を受けるのですが、自分には歌詞全体を通して、「 故郷(ふるさと)を離れて都会で働いている人の背中を押す応援ソング」のように感じられました。

 

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②曲調について

イントロ・・四分音符二つ+八分音符四つ×2小節。2小節を一括りとする定型

      フレーズのリフレイン。基本最初から最後まで。最近、乃木坂の

      シンクロニシティーやはじまりか、でも耳にする定型フレーズの

      リフ。古来用いられてきた手法、個人的には大変好き。

      音的にはピアノ系の音だけど、打弦楽器のそれではなくて、なにか

      つまびいているような感じにも聴こえる。結果的に、このイントロ

      が流れると、「ピンとした緊張感」が生まれて、聴く人の耳をより

      集めるようにできているとてもいいイントロだと思います。

Aメロ・・・一番と二番では、バックのギターに大きな違いがある点に注目。素直で

      親しみやすいメロディー。

Bメロ・・・ギターのカッティングがすごくグリップ効いていて、聴いていて大変

      心地よい。上昇系を盛り上げていく乃木坂だったらストリングス的な

      音がここでは80年代アナログシンセ楓の音が用いられていて、これも

      個人的にとても好き。

サビ・・・・安定の「カノン進行」。ポップスの定番。

      男性コーラスで厚みを付けるのあまり好きではないけれど、ここでは

      とても効果的だなと感じる。メンバーのやさしい歌声と、バックで

      鳴っているいろんな音やフレーズが重なり合って分厚いうえにバランス

      よい。コーラスだけが、或はバックトラックだけが浮いているといった

      印象も無い。

 

 総じて、よい曲だなあ、という印象。

 

 ③ゆみりんかわいい

 

ゆみりんかわいい

 

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 ④MVについて

 

小豆島(香川県)ですね。神戸、姫路、岡山、高松などからフェリーで渡ります。

撮影場所はオリーブ園。自分も行ってみたのですが、小高い丘のうえにあって、瀬戸内海が見渡せる風光明媚な場所でした。

  

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 ⑤最後に

現在行われている陸上公演で、オープニング曲として披露されるのがこの「思い出せてよかった」です。「思い出せてよかった」とメジャーデビューシングル「暗闇」の2曲はフルコーラスで演奏されます。どの曲も大切だけれど、とりわけ、この曲はSTUにとって大切にされている曲、フルで演奏して伝えたい何かがある曲なのかなと思っています。

 

今まで、瀧野、磯貝、甲斐の3名のセンターによる楽曲披露を見てきましたが、この曲に関しては圧倒的に瀧野由美子がいいです。曲の冒頭で、手をピンと上にまっすぐに伸ばして上を向く振りがあるのですが、照明がパッと明るくなった瞬間のゆみりんのシルエットがあまりに美しくて目を奪われます。恵まれた身長と長い手足がこの曲のダンスに映えています。

 

 自分は東京から故郷に戻ってきたけれど、逆に、東京時代に抱いていた夢を思い出して、「故郷に流されず」日々を頑張っていきたいな。

この曲を聴いてそんなふうに思います。

                               (だいせんせ)

 

 

追記

先日、フタバ図書海田店さんでこの曲が収録されている「11月のアンクレット」(TypeA)を購入したのですが、開封したらなんと中の写真がゆみりんでしたー!

ありがとーーー!!

 

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