My Revolution

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部活を引退した高校3年生の夏、補習授業の教室でこのアルバムを貪るように聴いていた日々をなぜかよく覚えている。いちばんよく聴いていた曲はMy RevolutionではなくてTEENAGE WALKだったけど笑。

発売当初の売り出し文句もよく覚えている。

史上初!女性アーティストが10代で2枚組アルバムを出す!みたいな言葉が並べられていた。このとき1986年。史上初、女性、10代、といったワードがセールスの煽り文句として各種メディアの中でおどっていた。

 

ほんとうによく聴いた。(クラスの中でもよく聴かれていた。

夏の目標を失った、その時の自分の心のエアポケットみたいなものにはまってしまったように。そしてこの曲がポップミュージックの大スタンダードナンバーとして、今日までこうして歌い継がれる曲になっていようとはもちろん予想だにしていない。

間違いなく、自分の人生の中に存在していた季節を、未来への不安を彷徨っていたあの時期を、自分に寄り添い、勇気づけてくれた音楽。

My Revolution

 

 

幾星霜。

12月1日、僕は思いがけないかたちでこの曲と再会した。

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渡辺美里「My Revolution」初生放送

 

自分で自分を鼓舞していくような歌ってこの時にもあるにはあったけど、やっぱりどこか恋愛(或いは失恋)がベースになっている曲がそれまで大半だったように思う。

この曲の歌詞は男女のフィルターなくストレートに刺さってくるように思う。

 

きっとほんとの悲しみなんて 自分ひとりで癒すものさ

 

自分だけの生き方 誰にも決められない

 

夢を追いかけるなら たやすく泣いちゃだめさ

 

たったひとりを感じる強さ のがしたくない 街の中で

 

メロディーにのって伝わってくる言葉(歌詞)のメッセージ。

ほんとに今でも色褪せない。

 

先日この曲をステージで披露した彼女は歌う直前に

 

まるで自分のことをうたっているような歌詞なんです

 

と言っていた。

自分の人生をかけた大切なコンペティションの勝負曲にこの曲を選んでもってきたのだ。嗚呼、彼女もまたこの曲に、この音楽に救われてきた子なんだと思った。

確認だけど、親子以上に年齢も離れていて、環境とか今いる場所とかとにかく何もかもすべてにおいて僕はこの彼女との何らの接点も有していない。せめて生まれた年が同じとか地元が同じとか、それすらもない完璧な他人なのだけど、ただ彼女が歌う姿が好きで、それだけで一方的に応援している他人にすぎない。

一方定な共感と認識をあらたにしたうえでもなお、「自分のことをうたっているような歌詞だ」と述べた彼女に対して、ハッと昔の自分のことを思わずにはいられなかった。

My Revolutionという曲が生まれてからもう35年、ずっと多くの人の気持ちに寄り添い、生きる力をこの音楽が与えていたことを示した瞬間にも思えた。

 

いま12月1日の生の場面をなかなか思い出せずにいる。

コンペ全体を真剣に追い過ぎていろんな感情の整理がまったくできなかった。録画は見直しているけどそういうことじゃなくて。

 

無理を言うけど、みんなの前でもう一度My Revolutionを歌ってはくれないだろうか。

聞くところによると作曲者の小室哲哉さんは(特にサビの部分を)、「みんなで一緒に歌える」ことを想定して作ったとも言われている。そんな機会ないかな。無いか笑。

 

今はじゅうぶんに心の休養をとってもらって、またいつかこの曲について触れる心境が訪れる時が来たなら、その時には耳を傾けてみようかな。

My Revolutionを歌ってくれてありがとう。

それだけが言いたかった。

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                      (だいせんせ)

 

 

 

追記:

ここからはMy Revolutionの楽曲について。

 

 

〇あの転調について自分が思うこと

この曲が生まれた1986年を「転調元年」と名付けてみたり、曲語りをする人たちがほぼ全員例の転調について(のみ)語っちゃうような状況っておかしいんじゃないのかなとも思う。リアルタイムで聴いていた時代、転調を転調と気づかずに聴いていた人が大半なんじゃないかな。もちろん当時も話題にはなっていた。あれこれ騒いでいたのは確か。ただ自分とか自分の周辺では、「別に普通だよね」っていうのが評価。少なくとも転調部分を凄い!とか、いい!とか思ってこの曲を聴いていたわけではまったくない。自分に関しては。あまりに偏ってるし作品全体への敬意を欠く。

そんな騒ぎ立てるほどのものか?という印象が今でもずっとある。

 

小室哲哉自身がディオンヌワーウィックのハートブレイカーを元にしたって言ってるわけで、それでハートブレイカー聴けばニヤリ、なるほど!なわけで。それ以上でも以下でもない。

 

たぶんほんとのすごさは、転調なしで収めようとしたら歌えないくらい高い音までいってしまうから音域収納の手段としてああいうかたちにした。そういうことなんじゃないのと思っている。すごく技術的な事柄。

ただ、歌手がもしも華原朋美なら逆にそうしていたかも笑。(転調は必要なかったかもという意味です)

Bのキーでサビ前にDのコード、これが転調後のキーGのドミナントにあたるから副5度による転調。ざっくり言うと平行調同主調への転調。三度下げ。書くとめんどくさいけど聞くと自然な感じがして、それでいいと思うけど。

 

渡辺美里さんご自身は、この転調ばかり分析されてしまうことに忸怩たる思いがおありのような気がするんだけど。編曲家(作曲家)大村雅朗さんを特集した番組の中でのインタビューからそう感じる場面がありました。

 

 

 関わるすべての人たちが、音のひとつひとつを、ほんとに些細な部分ひとつを取っても、それらを良いものにしていこうと真剣に取り組んだ結果なのではないかと。

 

 〇転調ついでに脱線

自分的にいいっ!と思う転調曲をいくつか。

何度目の青空か

 サビでの転調。こんな鮮やかな曲ほかにない。

サヨナラの意味も構造的には同じ。

きっかけ

制服のマネキン

ロマンスの神様

 この曲を書いた人は天才!まじ天才!

赤いスイートピー

 歌詞に示される心象風景(不安な気持ちなど)にあわせて

 音も崩していく。小節或いは拍ごとに部分転調、転調的音階を

 もってくるユーミンの尋常ならざるテクニックが否応なしに。

異邦人

 池田ちゃんがこのあいだ歌ってるの聴いてあらためて。

 転調ってこれよ。同主調への転調。

 暗い所から明るい所へパッと場面転換するの。

 池田ちゃんは上手く歌ってたね。

バビル2世

 上に同じ(笑

夜に駆ける/YOASOBI

  ここ最近でいちばん好きかも。

 めくるめく音楽の場面転換!息をもつかせぬとはまさにこれ!

 個人的にはこの曲の転調や展開のほうが「衝撃的」。

 

 

My Revolutionの良さ

 この曲が生まれた1986年って、シンセサイザーだったり打ち込みが音楽の中で急速に発展をしていった頃。みんなが自分の思い思いの音を一から作っていったり、或いは重ね合わせていったり、人間の演奏では困難だったリズムやパターンを機械の力を借りながら新しいものを作っていったり、そういうことを競い合っていた時代。

 

自分は小室哲哉TM NETWORKのCome On Let's Danceという曲が同時期大好きだったのですが、この曲もギミックとしては超先鋭的なのに、旋律としてあらわれてくるものの中にはどこか単純で親しみやすさもあったり、そして後にダンスをポップスの中の「要素」として取り入れるスタイルを確立してJ-POPの生みの親の一人として呼ばれるわけなんだけど、ダンスにしてもメロディーにしても小室さんの中に『みんなで、集団で一緒に歌える(踊れる)もの』が大切なものとしてあるような気がする。

 

この曲で言えば、イントロで女性のコーラスがついている一方、サビではそれが男性のコーラスにとってかわる。まるでサビを一緒に歌う、口ずさむことを誘発しているかのように、そんなふうに聴こえる。

 

 発表当時まだ10代だった渡辺美里さんの周辺には、「10代」というワードが過剰に踊っていたように思う。若く影響力を持つであろう人を「若きカリスマ」としてもちあげる風潮のはしりだったように思う。(この時にはもちろん尾崎もいて)

けれど、Lovin' youというアルバムから伝えられたメッセージはそんなマスコミの煽り文句やいやらしい意図をどこかに吹き飛ばしてしまうくらい、聴き手にはまっすぐに伝わったと思う。人がどうしても若いころにしか持ち得ないような正義感や感性のすべて、等身大の渡辺美里のメッセージが支持されたのだと思う。

それが時代を経てもずっと繋がっているのだと思う。

 

大村雅朗さんのアレンジについて

 

「転調とかいろいろ みなさん分析されますけど、 やっぱり音色と響きの素晴らしさっていうのが、大村さんの音楽に対する姿勢と品の良さっていうものが、私はすごく好きです」

                     渡辺美里

風の譜~福岡が生んだ伝説の編曲家 大村雅朗

BS日テレより

 

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制作にかかわった人たちすべての奇跡的な結合がMy Revolutionの良さなんじゃないかな。

そして時代は巡る。


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