福岡ダイエーホークスファンの女の子三人組
ずっと昔、博多の日銀前の屋台「ともちゃん」で僕はひとり飲んでいた。福岡に出張に来たときには必ずといっていいほどこの屋台に来て、おでんや串焼き、ラーメンを食べることをなによりの楽しみにしていた。
この日僕はひとりで来て飲んでいた。いつも来る時間より早かったせいか?珍しく屋台のほうは空いていて、お客さんは自分、ネクタイ姿のサラリーマン、あとは福岡ダイエーホークスのユニホームを着た若い(まだ高校生くらいに見えた)女の子三人組、の5人だけ。どうも試合が終わってすぐだったみたい。
(その後ほどなくして派手なギャルの二人組も来た、、、)
僕はいつもの通り、明太子、しいたけの串焼き、おでんのウィンナや大根を食べながらビールを飲んでいた。もちろん最後はラーメンの予定で。夜の風にあたりながらいい感じでお酒もすすんでそろそろラーメンにすすもうかと思った時、自分の正面に座っていたネクタイ姿のサラリーマンが大将に、
「ペンとメモ用紙ちょーだい」
と一言いいました。別に僕はこのことはなんにも気にならなかったのですが、しばらくして大将が、「七千〇〇〇円です(細かな数字は覚えてない)」とお会計を告げたことでちょっと「おやっ?」と思ったのです。
このサラリーマンさんは僕が見る限り普通に食べて飲んでただけなので7千円はないだろう、もしかしてツケ払いでもあったのかな?ぐらいには思いました。
それでも別にそんなこともまあたいして気になりません。
そして、サラリーマンが屋台を去った10分後くらいにこんどはFDHユニの三人組がお会計をお願いしました。
すると大将が
「・・・・・・・」
無言で首を横に振るだけなのです。
女の子たちが。「えっ、なんですか?」と怪訝そうに尋ねると大将は一言だけ
「さきほどの方が済ませて帰られました」
と、言うではありませんか。
僕はそのときはじめて、ペンとメモ用紙の意味を理解したのです。この人はただ黙ってこの子たちのぶんを支払ったのかと。
当時まだ20代だった自分はこのサラリーマンの行いがすごく粋でかっこいいことに思えて、それでその時の光景を今でも鮮明に覚えているのです。博多の夜の出来事として。
さらに、このサラリーマンのことを「おじさんやるねえ!!」と思っただけでなく、女の子たちのその後の言動にもとても感動したのです。
まず大将にしきりにあのサラリーマンの名前を教えてほしいとせがみます。
「えーーー、ウチら名前もきいとらん」
「名前くらい教えてほしかった」
「お礼もなんも言えんけん」
「お礼も言えんとか申し訳ないとよ」
誰も、「ラッキーうひゃー!」とか「きもーい」みたいな浮かれた言葉や態度をなんら示さないのです。ありがとうという気持ちと誠実にお礼を述べたかった、そんな態度がにじみ出ていました。あと、黙って首を振るだけでなんにも言わない大将がめちゃくちゃかっこよかったのです。
こういうこと言うとなんですけどだいたい自分なんかはですね、、いやらしい下心だったり軽佻浮簿な世相に塗れて生きているわけで、こういうことできるおじさんがまずかっこいいと、そしてそれをちゃかしたりしない女の子たちもなんていい子なんだろうと。
もしかしたら間違ってるかもしれないけど(たぶんあってる)、九州人の心根というか心意気を理解するうえでこの出来事は僕の土台になってるんだな。
そして、福岡ダイエーホークスという名前を見聞きするたびに今でもこの夜の出来事を思い出すのです。
20代の僕は、自分もいつか歳をとったときに、さらっとこういうことができる大人になりたいものだとこの時思いました。
月日は流れ、僕はもうこの時のサラリーマンの年齢をとっくに過ぎてしまいましたが、今でもまだそういう大人にはなれていません。
「ともちゃん」に行きたいです。
(だいせんせ)
(追記)
この一連の出来事のあと、屋台には僕と派手なギャル二人組だけになりました。
ギャル二人組に僕はジロリと凝視されてしまいました(泣)。
※因みにこの二人組はガンガンに飲み食い連発していた!
まるで逃げるように即座にお会計をお願いして(2千円くらい)、川沿いの東急ホテル(当時)まで走って帰ったことを忘れてはいません。僕の情けない人生そのものみたいです。
(追記)
アルバイトで大阪球場(当時)南海ホークスのラッパ吹きをしたことがあります。
杉浦監督ってやさしそうな方でした。
あと、ダイエーは若田部投手はちょっとおいといて、お嬢さんかわいらしい方でしたねHKTの。
初恋バタフライはとてもいい曲です。