レコードを整理しようとしたけれど/青い影のこと

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結局は整理できなかった。
中学生の頃に買った大瀧詠一のロングバケイションのLPを引っ張り出してこようと思い、つい先日、もう何年間も開けていない(笑)家のとある押入れに手をいれた。

 

目当てのロングバケイションは出てこなかった。たぶん就職のとき、一緒に家から東京に持ち出したレコードのうちに含まれていたんだと思う。その後の度重なる引っ越しの中で、楽器、機材、レコード/CD関係、本や資料、そうした類のものの大半は人にあげたりなどで処分、手放してしまった。東京にいたころはまったく趣味も自分も捨てて働いていた。

 

ロンバケは出てこなかったけど、懐かしいレコードがたくさん出てきた。だいたいの予想は出来ていたけれど。でもこういう作業やりだすと整理にかなり時間をとってしまうので、ほどほどにしておいて押入れを閉めた。整理をしてみたかったのは、果たして自分がどんな音楽を聴いてきたか?ということ。レコードの時代に何を聴いてきたか?ということ。たぶん整理はつかないと思う。けど整理がつかないなりに、自分なりに、ちょっと考えてみたくなった。

 

〇原点はクラッシック

祖父がクラッシックファンだった。

祖父の家(舞鶴市)に行った時、祖父はたいていクラッシックレコードを聴いていた。我が家で父がずっと聴いていたイタリア奇想曲(チャイコフスキー)が、祖父の家のステレオから流れているのを聴いたとき、子どもながらに祖父と父の繋がりのようなものを理解したし、お父さんはなんでこんなにいろんな曲の名前とか作曲家を知っているのだろう?と不思議に思っていたことも解決していった。

 

そんな祖父が聞いていたレコードたちは、祖父の死後、一部を自分が引きとらせてもらった。そしてそのまた一部が家の押入れにあった。舞鶴から持ち出したときのまま、未整理状態で。正直、手が付けられないというか、あまり付けたくないような。LP盤はまだしもSPレコードはどれも埃だらけだし、一部は水害に浸かったものもあるし(砂とか)、そこらへんがもう雑然とした状態であまり触りたくない。いつか整理する必要があるとは思っているんだけど。たぶん資料性の高いものも存在しているような気がしてならない。

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祖父は謎の人物。曾祖父は舞鶴で海軍の軍人さんだったらしい。祖父も軍属と言っていいのか?戦前は水交社にいたとのこと。戦後は引揚局に転じた。不思議なことに、何故かロシア語を話し、家ではレコードをかけながらロッキングチェアでパイプの煙草を燻らしているような人だった。舞鶴や呉にはそうした種族(笑)の人たちがいたのだろうか。それと、祖父が戦前戦中に水交社で果たしてどんな仕事をしていたのか、親族の誰からも聞いたことがない。まあ音楽とは別の話しで。

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〇古い時代の映画音楽

さいころからレコードを聴くことが大好きだった自分に、家族以外にも、特に叔父が自分にたくさんのレコードを与えてくれた。与えるというか、叔父が買ったレコードはしばらくすると我が家にやってきて、たいてい自分がかじりつくように聴いていた。

 

映画音楽がいちばん多かった。ロミオとジュリエット(オリビアハッセー主演)のサントラ盤だったり西部劇、イタリアやフランスの映画にハリウッドもの。この頃ちょうどニーノロータやフランシスレイの映画音楽に多く触れ事になる。10歳から12歳にかけての時期だったような。

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写真は映画「慕情」。この曲ではじめてナットキングコールの歌声に触れることになる。

あとは「シェルブールの雨傘」でミシェルルグラン、「ひまわり」でヘンリーマンシーニと。片方の頭で、世間で流行っていた宇宙戦艦ヤマト銀河鉄道999を聴きながら、もうひとつの頭で古い映画音楽を聴き漁っていたような子ども時代だったような気がする。

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 ジョンウィリアムズが登場してきたあたりから(スピルバーグの映画)、昔の映画音楽趣味に今の(当時の)映画音楽が追いついてきて、さらにその後、映画幻魔大戦」でのキースエマーソン、そして「クラッシャージョウ」での前田憲男、この二人が手掛けた映画音楽をピークに、自分の映画音楽熱はいちど収束することになる。

 

 〇レコード棚にうずもれて居たプロコルハルムの「青い影」

たぶんずっと家にあったんだと思う。(おそらく叔父がお家に置いて行った)

中学1年生だったと思う。偶然、レコード針を落として聴いてみた。グループについても曲についてもまったく何の知識も情報もなく、まるっきり白紙で聴いた。気が付いたらその日はこの曲をずっと聴いていた。というのも兄が、「針がすり減るからもうやめとけ」と言われたこと、そのことだけを今でもよく覚えている。その当時この曲を聴いてどんな気持ちになったかは思い出せないんだけど、かなり長い間、この曲に浸り、耽溺していたことは間違いない。

 

自分が人と比べてそれほどビートルズにのめりこまなかったのは、この曲にずっと頭がとどまっていたせいかもしれないと思う。ある時、親戚のお姉ちゃんにこのレコードを貸してほしいと言われたことがあったんだけど、レコードがすり減ったら嫌だなと思って貸さなかった(親に叱られた)。自分の中でかなり特別なレコード盤になっていた。ちなみにその時、自分はと言えばその親戚から氷の世界(井上陽水)とひこうき雲荒井由実)のLPを借りていた(笑)。 

 

なんでこの曲が好きなのか?ちなみにプロコルハルムの他の曲は知らない。それと、何回聴いても何歳になっても歌詞の意味はさっぱりわからない。というか歌詞を聴いてない。語の響きだけ。好きな理由をうまく言葉にできない曲のひとつ。もっとも言葉で説明が出来ない曲。

 

〇「青い影」のその後

高校生になってすぐにバンドをはじめた。交友関係も広がったけれど、誰も「青い影」に関心を示してくれる仲間はいなかった。「ちょっと退屈」とか「悪い曲ではないね」とかそんな感じ。そういうこともあって、もしかしてこの曲ってそれほど世間での評価は高くないのかな、なんて思ってた。

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高校の頃 メイン機材はDX7 サブでCASIOのCZ-3000

その後大学に行くと、その頃はバブルの時代と言われて、そうするとだいたいどこの大学でもダンスパーティーなるものをやっていた。ユーロビートではなくてまだディスコがソウルだった時代。あるとき、ラストのチークタイムで「青い影」がかかってびっくり仰天した。ああこの曲は世間でこういう位置づけなのかと妙に納得がいったり、ちょっと嫌な気持ちだったり。でも、一世を風靡したシルビア(S13)のCMにも使われたり、ああ自分の好きな曲はそれなりに世間でも評価は高いのか、なんて納得もしたりの大学時代だった。

 

〇「青い影」のさらにその後

山下達郎とかユーミン周辺の音楽情報を普通に追いかけていれば、青い影との関係とか与えた影響とかはわかってくるようになった。むしろこんどはそういう情報が氾濫するくらいになったような印象。ネットの時代になって、特別熱心な音楽ファンではなくても、誰でも簡単にこの曲とひこうき雲との関係性や、山下達郎とのエピソードなんかを知ることができるようになった。毎月FM情報誌の中の評論家のエッセイとか小ネタ、ラジオの中で語られるいろんなエピソードなんかを追いかけてながら、青い影をめぐる周辺情報を構築していった自分が、かつての日々が懐かしい。

 

いまでは、日本のアーチストの中に青い影が好きな人が多すぎることが、この曲に影響を受けている人が多すぎることが、現在の日本のポップス停滞の原因になっている、みたいなことを言う評論家まであらわれた。そうかもしれない(笑)。

 

 〇最後に

いま家にはレコードプレーヤーがないのでレコードを聴くことができません。

仮にあったとしても大事な曲すぎて、そして大切なレコードすぎて針をおとすことをためらうかもしれない。不思議な気持ち。

 レコードを整理するのはまだまだ先のことになりそう。

このレコードを聴くのは10年先くらいでもいいかな。

 

                         (だいせんせ)

 

追記

このあいだ江田島いったとき、矢野帆夏ちゃんのために江田島の海岸にピアノを置いて(そのために電池でも駆動するの88鍵電子ピアノを購入)、「青春の影」を弾き語りしたのね(動画ありただし非公開)。なんで「青春の影」だったかというと矢野さんがある場所で歌唱予定だったけどそれが幻になったので。もちろん財津和夫さんのです。

 

 それで海で適当に青春の影弾いてると、左手の鍵盤がね、中学生の頃にエレクトーンで弾いた青い影の足の鍵盤の動きと同じだったの。青春の影弾きながら40年くらい前に弾いた(足で踏んだ)青い影の記憶がよみがえってきたわけ。

左手の現在と左足の記憶がつながったわけ。

そう、カノン進行なんですよね。もちろん昔はそんな言葉とか分類も無いわけのですがしみじみと音楽の繋がりを思いました。

 

クラッシック音楽を由来とするカノン進行には、清楚、上品、気品のある、といった特徴を持っているのだけど、今の日本のポップスの中で、そのカノン進行のヒット曲をいちばん多く持っているのが乃木坂46なんですよね。