~本の海を旅するように~ なんとなく鈴木絢音 -文学編
いまさらであるが、鈴木絢音ちゃんは、綺麗な少女である。
実は乃木坂46に美形でないメンバーはいないのであるが、絢音ちゃんの容貌の美しさには独特のものがあると思う。
それこそが、ずんずくずーさんの語った「内面から湧き出る美しさ」なのだろうか。
そんな彼女の内面を探るべく、読書好きな彼女が今まで読んだという本から、アプローチしてみたい。
さて、昨日買った雑誌「月刊エンタメ 2016年10月号」に「生田先輩ともっと仲良くなりたい座談会」という企画が載っていた。いくちゃんと蘭世・絢音・みり愛の2期生三人の語らいの中、いくちゃんが「最近、(絢音の)噂を聞くことが多くなったんですよ」と口にした通り、ファンからもメンバーからも注目されている成長株の絢音ちゃんである。
私はというと、割と早くに彼女の美貌には魅かれていた。
初期に保存した写真がこれである。
お分かりと思うが、この写真、舌が出ているのである。
実に珍しい一枚。
彼女には「変顔写真」というのが、まったくないのだ。
意図して変な顔を撮ったものを、私は観たことがない。
なまはげの扮装をしていてさえも、表情は作っていない。
彼女のブログでの自撮り写真は、端正な表情ばかりである。
こんなやつ。
端正な表情ももちろん魅力的だが、舌出しの破調が、特に私の心の琴線に触れたのである。
では、本題に入ろう。
彼女の文章だが…
彼女自身が自分のブログを評して
「私らしいけれど アイドルらしくない堅苦しいブログを書いてきました。」
と言う。
堅苦しいかどうかは印象によるが、彼女のブログのタイトルには必ず「。」が付いている。
さあ、そのブログを全部さかのぼって、彼女が読んだと表明している作家名と著作を挙げてみよう。
サンテグジュペリ「星の王子様」
「好きなジャンルはSF小説 現代小説 時代小説」
「星めぐりの歌。」・・・読んだとは書かれていない。タイトルにこう書かれている。宮澤賢治の作詞した歌である。
「シェイクスピアの4大悲劇のうち、マクベスとリア王は読んでいない」→つまり「ハムレット」「オセロー」は読んでいる。
「ぜったい読まないと決めたホラー小説・圧力なべと猫がトラウマ」→筒井康隆『乗り越し駅の刑罰』『顔面崩壊』
泉鏡花「夜叉ヶ池」…運命について考えさせられました。
沢木耕太郎「深夜特急」・・・「poety」(13th個人PV)で監督さん(ロボット・望月)に教えられて読んだ。
筒井康隆さんの作品のベスト5を教えてください。
旅のラゴス
モナドの領域
こぶ天才
傾いた世界
東野圭吾は読むの?
>最近だとナミヤ雑貨店の奇蹟を読みました。
装丁が好きな本はありますか?
よく読んでいたSF短編(ショートショート)は星新一さんの作品です。
これに、先に触れた最新雑誌月刊エンタメの座談会で
「あっ・・・私、現代小説はあまり読まなくて・・・」
まとめると
星新一、短編集
筒井康隆「時をかける少女」「旅のラゴス」「モナドの領域」「こぶ天才」「傾いた世界」
「乗り越し駅の刑罰」「顔面崩壊」
・・・SF小説
・・・現代小説
泉鏡花「夜叉ヶ池」・・・伝奇小説
「星の王子様」・・・海外・童話
「ハムレット」「オセロー」おそらく「マクベス」も・・・シェイクスピアの戯曲
さて、驚くべきことである。
「現代小説はあまり読まない」のだ、彼女は。
教養的古典が多いそのラインナップたるや、親御さんの影響が大きいと見ざるを得ないか。
「本が好きな子に育ってほしいと、母が小さい頃、図書館や読み聞かせ会に連れて行って本と触れ合う機会をたくさん作ってくれて、読書の習慣が自然に身に付きました。」とブログで語っている通りだ。
民俗学については、その創始者と言うべき柳田國男の記念碑的書物「遠野物語」が、岩手県遠野地方の伝承をまとめたものであることで、秋田出身の絢音ちゃんにとっては、学校や親御さんから勧められることがあったのではないかと推測できる。
泉鏡花も、柳田國男と並列して発言しているので、民俗学の方面からのアプローチと思われる。
「学問」と捉えると、いくちゃんのように「勉強系?」と敬遠してしまうかもしれないが(前出の月刊エンタメ座談会での発言)、実は昔話、童話の原型をたどっていくものと見れば民俗学の敷居は低い。ファンタジックな要素も強いのだ。泉鏡花の作品も幻想的な寓話であり、空想力の世界に遊べる。
特に「夜叉ヶ池」は現代でもしばしば舞台で上演される人気作品だ。
そして、ここに、星新一や筒井康隆ら、SFとのつながりもある。
「現代」や「現実」の枷から解き放たれ、想像力をはばたかせて楽しんでいけるのだ。
筒井康隆「時をかける少女」は、映画、アニメで観た人が多いと思う。
私の世代はNHK少年ドラマシリーズという、草創期のSFドラマの名作として触れた。もちろんその後原作を読んだ。そしてSFの魅力にはまり、筒井康隆や星新一、矢野徹、小松左京、平井和正…と読んでいくことになるのだが。
けれど、絢音ちゃんの場合、筒井、星以外にSF作家の名は挙がっていない。(もっとも現代ではSF要素はあらゆる作家が普通に使っていて東野圭吾だってそうなのだが)特に好きな作家として名前が幾度も挙がり、好きな作品ベスト5まで発表している筒井康隆は、絢音ちゃんにとって特別な存在に違いないのだ。
では、筒井のどこが絢音ちゃんを惹きつけているのか。
私も筒井作品を結構読んできたのだが、既読がかぶっていたのはなんと「時をかける少女」だけだった。これでは話にならないので、ブックオフへ走りとりあえず見つけた「旅のラゴス」を読んでみた。
筒井康隆という作家は作品も多ければ取り扱っているテーマも多彩で、一概に論ずることなど到底できないが、何事にも「徹底して取り組む」という姿勢があると思う。
「時をかける少女」で清冽な初恋のときめきを描き切り、「虚構船団」では歴史と人間の様相すべてを書き尽さんとする。ばかばかしいこともグロテスクなことも書けるだけ書かんとする。
そしてそれらはすべて、この「旅のラゴス」にも盛り込まれていた。
舞台は人類が移住したどこかの星。科学文明を失いばらばらな統治のもとで、超能力を身に付けだした者もいる「この世界」。清純な少女とのわずか数日間の交流を心に秘めて、世界の果てまで旅をつづけ、あらゆることを体験し、王と呼ばれたり奴隷の境遇になったりしつつ、かつてあった知識と学問体系を吸収していく主人公ラゴス。彼の探求から、人類文明の盛衰が浮き彫りになっていく。人生の最後に彼は、憧れ続けた少女の面影を追って極北の地へ還らぬ旅へ出る。壮大さとSF的仕掛けが巧みに構築され、しかも文章は青春のリリシズムに満ちている。教養小説=ビルディングスロマンの趣さえある。
飛行機やガンダムプラモデルへの興味が示すように、「構造への興味」が強く、知識欲旺盛な絢音ちゃんにとって、「人類世界の様相」を解き明かす啓示に満ちたこの作品は特に面白かったに違いない。
そう、一見控えめな絢音ちゃんの中には、溢れんばかりの知識欲がある。
まだ知らない知識を求め、現実にはなかなか体験できないことを味わうために、彼女は本のページを開く。
礼儀正しく、親御さんや先達の勧めを受け入れて、なおかつ自分の心の声に従い、真っ当に、まっすぐに本の海を航海し、飛翔していく。
また、どんなに時代や国が変わっても、人間の喜怒哀楽や青春のあこがれは、普遍的である。それを文学作品や民俗学の著作で知ることで、絢音ちゃんの情緒は深く豊かに育まれてきた。
だから、彼女の瞳には知識欲につながる理性の光と、溢れる情緒の潤いが宿り、人を魅惑してやまないのではないか。
絢音ちゃんの、内面の豊饒さが徐々に表に出てきたのか、彼女の人気もじわじわと上がってきている気がする。ただ、まだ彼女の表情は硬い。文章も「堅苦しい」と自分で言う殻を破れていない。
でも、大丈夫だ。
絢音ちゃんがもっとも読み込んで影響を受けているだろう筒井康隆という作家は、羽目を外したスラップスティックな作品でも有名なのである。
いつかは絢音ちゃんも、冒頭で掲げた舌出しのような可愛い破調で、いや、もっと大胆に画期的に殻を破って飛躍するに違いない。既にその兆候は明らか、かな。
(ライター:タキオン)